むかし、むかしの…
2月の3、4、5日と彩り irodoriとしては初めてとなる、
染色作家としての作品を企画展に出品します!
今回はその作品について少々語らせて頂こうかなと思います。
企画展の名前は「むかし、むかし」。
私が出品するのはロウケツ染めの布絵本、《鶴の恩返し》です。
美大生の頃の、染色の課題で作ったものです。
海外の方に日本の昔話を知って欲しいと、
「ひっかき」というロウを削って染料を染み込ませる技法で文字を書き、
話を印象的な六つのシーンに区切り、英文を入れました。
この前、久しぶりに戸棚の奥から取り出してまじまじと眺めてみました。
作家にとって、処女作や代表作と言われるものがあります。
しかしそれは基本的には後づけであり、
「これが自分の代表作!」と思って作ることなんてないかなと。
あれがそうだったんだなあと後で気付くもの。
それなら、この作品は染色作家としての処女作であり、
染色の世界に嵌ったキッカケです。
我ながら今みても、底無しにパワフルな作品だと感じます。
今だに染色の教授に会う度にこの作品が素晴らしかった話をされるのも納得…(笑)
ロウを使って出来る染色法をふんだんに駆使し、
滲み、ぼかしなど布に染料を染み込ませることでうまれるアクシデントを本人自体が楽しんでいる。
なんでそんな他人事のように言えるのかというと、今の私にはもう出来ないからです。
当時は良く出来過ぎて、どうしたってこの作品に自分自身が影響されていました。
「あれより良いものを作らないと!」という勝手な強迫観念。
その後一年くらいはこの作品の面影、二番煎じ感の強いものが多かったかなと。
そこからなんとか抜け出せて、卒業制作はまた違った作風のロウケツ染めの作品を仕上げられました。こちらもお気に入り。
(ウェブサイト、Artworkの「悪い夢」参照)
だからか主催者さんに企画展のお話を頂いた時、
まさにジャストなテーマなのに、すぐにはこの作品を思い出せなかったんです。
自分がうみだしたものに囚われ悩み、
やっと呪縛から解放された過去があったからでしょうか…。
過去の栄光にすがりたくないと、展示会や人目に晒したこともないくらい。
そうしていたら本当に存在まで忘れてしまうところでした。
けど、今なら出しても良いかなと。
改めて見直して一度苦悩から解脱出来たからか、良い意味で向き合えた気がしました。
それくらい、私にとってとてもとても思い入れのある作品で
今なら是非、皆様に見て欲しいと思えます。
学生の頃の私のありあまるパワーが、そこには溢れています。
テーマが「むかし、むかし」だなんてこれを出さずしてどうすると言うくらいぴったりで、
逆に良いタイミングに恵まれているなあとしみじみしてしまいました。
この作品を世に出せる機会を作って下さった主催者様、ありがとうございます!
その他珠玉の作家陣で、東上野のギャラリー「心」さんで開催されます。
アナログで作られた作品は直で見るのが一番強い。
落語家さんの噺や有名声優さんによる朗読会などもありますよ♪
ディザーサイトはこちら↓
http://site-804819-8043-5594.strikingly.com/
また物販含め告知しますね!
久しぶりの作品語りでした。